公正証書で強制執行する手順
債務者の財産に対して強制執行することができるのは、債務名義という文書があるためです。
強制執行するためには、債権の存在が明確でなければなりません。
債権者が裁判所に訴訟を提起したりして、判決を求めるのも、この債権の存在を公に証明してもらうことなのです。
債務名義とは、債務の存在を公証する文書なのです。
債務名義となる文書とは
◇確定判決
◇仮執行の宣言を付した判決
◇仮執行宣言付支払督促
◇執行証書
◇和解調書
◇調停調書
上記は、執行証書を除いて、いずれも裁判所の手続を経て作成される文書になります。
執行証書とは、金銭その他の代替物の給付を目的とする債務に関する公正証書で、債務者の執行認諾約款の記載されたものをいいます。
強制執行することの出来る機関は、裁判所と執行官であり、債権者が強制執行によって債権の弁済を受けようとする時は、裁判所または執行官にその申立をして、強制執行してもらうしかありません。
強制執行の申立には、その根拠となる債務名義を提出し、この債務名義に「執行文」を付してもらうとともに、債務名義をあらかじめ、または執行の開始と同時に債務者に「送達」しておかなければなりません。
強制執行の申立に必要なものは
◇債務名義
◇執行文の付与
◇送達
執行文とは、債務名義に記載された債権者と債務者の間の債権が現存し、執行力を有することを公に証明する文言です。
執行証書には、執行文の付与が必要とされています。
執行文は債権者の申立によって付与されることになっています。
執行証書について執行文を付与する機関は、執行証書の原本を保管する公証人とされています。
執行文の付与は、その債務名義の末尾に、強制執行できる旨を付記する方法によって行われます。
強制執行を行う為には、債務名義を強制執行の開始と同時に、またはあらかじめ債務者に送達しておかなければなりません。
執行証書も申請によって送達が行われます。
執行証書の送達申立は、公証人に対して行います。
強制執行をしなければならない時は、債務者は行方不明だったり、郵便の受取を拒否したりする場合が多く、送達は原則として、執行証書を作ると同時にしておくべきです。
公正証書の場合には、送達するのは、原則として公証人です。
公正証書は、送達申請をしなければ送達してくれません。
法律上の手続で使われる文書には、原本、正本、謄本などの区別がありますが、公正証書の送達は謄本によって行われます。
公正証書の場合には、原本は公証人が保管し、債権者には正本が交付されます。
公正証書の送達の方法
◇特別送達
◇書留郵便に付する送達
◇執行官による送達
◇公示送達
公証人は、送達の申立を受けると、まず特別送達という方法によって郵便で送達します。
特別送達というのは、判決や公正証書の送達のために郵便法で特に定められた送達方法です。
公正証書謄本の原則的送達方法は、特別送達で、他の送達方法には、特別の要件が必要になります。
送達すべき書類を債務者の住所地に書留郵便に付して発送すれば、その送達の時に送達があったとされるものです。
債務者も同居者から送達書類の受領を拒まれたりなどしたため、特別送達も執行官送達も出来ないといった場合に認められるものです。
債務者の転居先が不明で特別送達できない時は、公示送達の方法によることになります。
執行官が送達するのは、同時送達とその他必要がある時に限られます。
同時送達というのは、執行官が差押と同時に公正証書の謄本などを送達することです。
同時送達が出来るのは、事実上動産執行に限られます。
債務者に対する送達場所が知れないとき、債務者が外国に住んでおり、外国に送達するのが著しく困難な時は、執行官に公示送達の申立をすることができます。
公示送達は、裁判所の掲示場に掲示し、一定の期間が経過することによって送達があったことにするというものです。
公示送達は、事前に裁判所の許可を受けなければできません。
公示送達の申立の前に公示送達の許可の申立が必要になります。
この許可の申立には、債務者の転居先が不明であるとの資料を添付しなければ、許可はでません。
債務者自身が公正証書の作成を公証人に嘱託するために公証役場に出頭してきた時は、公証人が直接債務者本人に対し、公正証書の謄本を交付する方法による送達ができます。
債務者が実際に公証役場に出頭して、公証人から正本をもらうことが交付送達ではありません。
交付送達の手続を別途しなければ、送達されたことになりません。
執行文の付与申請は、執行証書の原本を保管する公証人に対して書面でします。
執行文の付与を受ける為には、債権者本人かその代理人が公証役場に出頭し、執行文付与申請書に記入して行うことになります。
執行文の付与は、執行証書を作成してから1週間以内は行われないことになっています。
執行文の付与は、執行証書正本の末尾に付記する方法によりますので、当然執行証書の正本を持参しなければなりません。
次のような文言が付されます。
「債権者甲は、債務者乙に対し、この公正証書によって強制執行することができる。」
付与年月日を記し、公証人が記名押印します。
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