交通事故の後遺症とは
<後遺症>
傷害事故で治療を受け、医学上これ以上の回復が望めないという状態である症状固定をむかえた時点で、後遺症の損害賠償請求に切り替わります。
請求には医師による後遺障害診断書が必要になります。
この内容によって後遺障害等級が決まり、それに応じた後遺障害保険金が自賠責保険より支払われます。
この保険金は傷害保険金の120万円とは別枠の扱いとなります。
後遺症で請求出来る損害は次のものになります。
◇積極損害
治療器具購入費、治療関係費、付添看護費、交通費、入院雑費など
◇消極損害
症状固定後の逸失利益
◇慰謝料
被害者本人と場合によってはその家族に対する慰謝料
<後遺症の積極損害>
後遺症の積極損害については次のようなものがあります。
◇治療器具等の購入費・買換え費・修理費
義肢、義歯、車椅子、介護用車輌、補聴器、めがね、かつら、盲導犬など
◇治療関係費
さらなる悪化を防ぐ為の治療のみ認められます。
服薬や注射などのほか、骨の形成後に行なう再手術など、将来行なわなければならない治療の費用も前もって請求することができます。
◇付添看護費・入院交通費・入院雑費など
被害者が一生植物状態の場合と、治療関係費に付随して発生する場合に認められます。
◇その他
家屋改造工事費、養護施設入居費、休学期間の授業料や家庭教師費用など
<後遺症の消極損害>
後遺症の消極損害とは、後遺症で労働力が低下し、収入が減った場合の逸失利益のことをいいます。
後遺症の逸失利益は、
基礎収入(円)×労働能力喪失割合(%)×労働力喪失期間(年)
で算出します。
将来の利益の先払いなので、ライプニッツ方式で中間利息5%を控除します。
◇基礎収入
事故前もしくは症状固定前1年間の現実収入を基礎とします。
収入実績のない未就労者などは賃金センサスの男女別前年齢平均賃金に基づきます。
◇労働能力喪失割合
後遺障害等級表から求めます。
◇労働能力喪失期間
67から症状固定の年齢を差し引いて求めます。
<示談後の後遺症>
示談は原則としてやり直すことはできません。
示談は、加害者が賠償する旨を決める契約であるのと同時に、被害者がこれ以上請求しないという旨を決める契約だからです。
しかし、後遺症だけは例外的に後日追加請求が可能です。
一応、後遺症の可能性がある場合には、示談書に
「ただし被害者に将来後遺症が発生した場合は別途協議し、加害者は被害者に本示談書で定めた損害賠償とは別に支払うものとする」
という、一文を入れておく必要があります。
示談後の後遺症の認定には医師診断書が必要になります。
<むち打ち症>
むち打ち症は外科的所見にあらわれないため労働能力喪失の立証が困難になります。
該当する症状としては、頚部・頭部痛、頭痛、肩こり、めまい、いらいら、手の震えや痺れなどです。
後遺障害等級表では12級12号(局部に頑固な神経症状を残すもの)と、14級10号(局部に神経症状を残すもの)がむち打ち症にあたります。
12級で3から5年、14級で2から3年の労働能力喪失が認められています。
むち打ち症の他に、自覚症状でしか立証できない後遺症として、味覚・嗅覚などの感覚障害、物忘れ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などがあります。
<外貌醜状>
身体機能は回復しても外観に大きなダメージが残ってしまう場合があります。
ホステス、俳優、モデルなど、容姿が大きなウエイトを占める職業の場合は男女を問わず逸失利益が認められます。
外貌醜状で実際に仕事が減ったり、廃業・転業に追い込まれた場合は損失分を加害者に請求できます。
被害者が事務職などの外貌に無関係の職業の場合は逸失利益ではなく慰謝料という形で考慮されることが多いようです。
特に女性の顔面や身体の醜状痕は就職や縁談に不利をもたらす可能性がありますし、生殖器の損傷は結婚生活を困難にします。
外貌醜状は後遺障害別等級表では7級12号および12級13号(外貌に著しい醜状を残すもの)と12級14号(女子の外貌に醜状を残すもの)、14級11号(男子の外貌に醜状を残すもの)に該当します。
<後遺障害の等級の異議申し立て>
自賠責保険会社が認定した後遺障害の等級に不服ならば異議申し立てを行なうことができます。
自賠責保険会社に「後遺障害認定等級に対する異議申立書」を提出します。
認定が不当な理由を記し、必要なら医師の診断書などを添えます。
申し立てられた事案は自賠責保険の調査事務所へまわり、常任顧問医による後遺障害不服審査部会で審査されます。
その回答にも異議がある場合は、医師・法律家・学識経験者による後遺障害不服審査会でさらに審査されます。
<後遺障害の慰謝料>
後遺症の慰謝料は入通院慰謝料とは別に、後遺症等級に応じて支払われます。
自賠責基準・日弁連基準ともに定額化されています。
きわめて重症の場合は負担がかかる近親者にも別途慰謝料が認められます。
慰謝料算定時に配慮されるのは次の場合です。
◇加害者が救護措置を怠ったため後遺症が重篤になった。
◇交渉段階で加害者や保険会社に不誠実な態度がみられた。
◇後遺障害等級が14級に満たない為逸失利益が認められない。
◇外貌醜状に対する逸失利益が認められなかった。
◇減収の事実がないため逸失利益を否定されたが、それが並外れた努力によるものと認められた。
◇将来つきたい職業を断念せざるを得なくなった。
◇近親者の介護が思うようにできなくなったためその近親者の病状も悪化した。
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