交通事故の治療費とは
<治療関係費>
治療関係費は次にようなものになります。
◇治療費
手術費、検診料、薬代、注射代、往診料等をいいます。
基本的に病院・薬局関係の実費は全額認められます。
ギブス、松葉杖、義手義足等の治療器具も含みます。
ただし、過剰診療や濃厚診療などの、事故受傷との因果関係が立証できない不明瞭な診療は否定されます。
◇入院費
平均的な病室の室料であれば全額請求できます。
個室や特別室は、他に空き室がなかった場合と、重症で特に必要と判断される場合のみ認められます。
◇針灸・マッサージ費用
治療上必要と医師の判断がある場合のみ、全額もしくは一部を請求することができます。
これは書面が必要になります。
◇温泉療養費・転地療養費
認められるのは稀です。
これらは、全て請求書や領収書がなければ請求することはできません。
<付添看護費>
付添看護費の請求には、医師が付添人の必要性を証明した書面が必要です。
ただし、小学生以下の被害者は無条件で認められます。
付添看護費には、入院看護費と通院看護費があります。
入院看護費は完全看護体制の病院の場合には、認められません。
例外的に医師が必要と判断した場合や、高齢、幼少の被害者には認められます。
◇職業的付添人への報酬は実費全額が認められます。
1日1万円から1万5000円が相場になります。
◇家族や近親者の付き添い
1日5500円から7000円が相場になります。
通院看護費は、被害者が高齢、幼少、身体障害など自分で通院できない場合です。
◇家族や近親者の通院付添
1日3000円から4000円が相場になります。
<交通費と雑費>
入通院にかかる諸経費には、次のものがあります。
◇交通費
電車・バス運賃、自家用車の有料道路代やガソリン代などは認められます。
タクシー代は交通事情や傷害の程度などで必然性があるときだけ認められます。
病院からの通学・通勤交通費や看護する近親者の交通費も請求できます。
◇雑費
入院雑費は1日当たり1400円から1600円前後と定額化されています。
雑費は、退院後の生活にも役立つものは認められません。
また、入院期間中の消耗品と、生活の慰安に役立つものは認められます。
入院雑費については、支出の正当性を立証する手間が大変なわりに総額が低額であるので、定額化されるようになっています。
この場合には、領収書は必要ありません。
<休業補償>
被害者が働けなくなった場合には、減収分である休業損害を請求することができます。
請求には、医師の診断書と収入を証明するものが必要になります。
ただし通院や自宅療養による長期休業は、医師の診断書がないと請求額の一部を否定されることがあります。
サラリーマンの場合は、事故による有給休暇の使用分も損害とみなします。
専業主婦、労働意欲と能力のある失業者なども保障対象となります。
自営業・自由業者の休業中の家賃や人件費などの固定費も休業損害となり、請求することができます。
後遺症がある場合には、症状が固定した時点で休業補償は打ち切りとなり、以降は後遺症による逸失利益の請求に切り替わります。
<サラリーマンの休業補償>
サラリーマンの休業損害は次のようになります。
◇給与がゼロになった場合
月収30万円で2ヶ月休職した場合の請求は60万円になります。
月収が変動する場合は事故直前数ヶ月の実績額をベースにします。
◇給与の一部が支給された場合
本来の給与と支給額の差額分を請求できます。
◇給与がゼロで労災保険(給与の60%)の給付の場合
残りの40%を請求できます。
◇会社から全額もしくは労災で60%、会社で40%の場合
請求はできません。
休業による賞与査定のマイナス分も請求できます。
役員報酬は、労働対価に当たる部分は休業補償の対象になります。
しかし、配当金や過去の功労への褒賞などの手当ての部分は補償されません。
<自営業の休業補償>
自営業や自由業の休業損害は、毎月の収入が変動しますので、前年度の実年収(売り上げから諸経費などを引いた額)を365日で割った額を日収と考えます。
確定申告上所得額に基づいて算定します。
年度によって収入差がある場合には、事故前数年分の収入から算出する方法もあります。
収入を証明するものがない場合
◇会計証拠(領収書・元帳・源泉徴収票など)の提示
◇賃金センサス男女別全年齢平均賃金にのっとる
などの方法によります。
また、収入以外の休業損害も固定費として認められます。
◇店舗や事務所の地代家賃
◇従業員(代替労働力も含みます)の給料
◇租税公費
◇減価償却費
◇修繕費
◇損害保険料
◇利子割引料
などあります。
<主婦の休業損害>
主婦であっても休業損害の請求をする権利を持っています。
主婦1日あたりの休業損害は自賠責基準では5700円、賃金センサス前年齢平均では1万円前後になります。
治療中に雇った家政婦への報酬も損害として請求できます。
パート収入を得ていた主婦や、夫の事業の共同経営者として補佐的立場にあった主婦には賃金センサスが適用されることがあります。
休業期間について、主婦は通院期間中まったく主婦業をしていないとは考えにくく、回復度に応じて10%、20%と補償が順次逓減されていく場合もあります。
<学生・失業者・アルバイト・外国人の休業損害>
学生・失業者・アルバイト・外国人の休業損害は次になります。
◇学生
就職が内定していた場合は就職先賃金と賃金センサスとの多いほうを適用します。
◇失業者
働く意欲はあるのに職に恵まれない人と、まるで働く気のない人とに別れますが、就労に意欲的な失業者は賃金センサスや離職前の収入により算定されますが、まるで働く気のない人は休業損害は否定される判例がほとんどです。
◇アルバイト・パート
継続的に勤務していれば事故前3ヶ月の収入を基準に算定します。
◇外国人
その人の日本在留資格によって異なります。
在留資格については、
●永住者
ほぼ日本人と同等に算出されます。
●就労者
日本で得ていた収入の実績から算定します。
●留学・観光・商用
本国の収入額から算定します。
●不法就労者・密入国者
事故後数年は日本での収入から、以降は本国での収入から算定します。
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